イタリア、6月のトリノ

トリノは、ずっと前からリストに入っていたのです。フランスとの国境に近いことが利点でもあり、足を遠のかせていた理由でもあります。だって、私たちが南フランスに引っ越せば、ドライブでの旅を楽しめるでしょう? パリ発の「貧相」な飛行機に乗って、旅と発見の喜びを台無しにしたくなかったのです。だから、待ちました。引越しは思った以上に時間がかかりました。でもトリノのことを忘れていたわけではありません。新居に落ち着いてからわずか2ヶ月でアルプスを越え、そこへ向かったのです。ついに。

車を運転してイタリアに行くなんて、大したことではないと思うでしょう? これまでにももっと珍しい、人の行かない場所を訪れたことがあるというのに。でも、自宅からイタリアがこんなに近いなんて、妄想が現実になったような錯覚に陥ったのです。

私が描いていたトリノのイメージは北部のブルジョア都市であって、よく聞く「オカルトの街」という噂は腑に落ちませんでした。この街は黒魔術と白魔術のトライアングルが交差する場所と言われており、ホラー映画の巨匠ダリオ・アルジェントが「サスペリアPART2」(1975年)を撮影した舞台でもあります。また自動車メーカーのフィアットが誕生した地でもあるので、その産業の歴史にも注目すべきでしょう。アルテ・ポーヴェラ(貧しい芸術:イタリアの芸術運動)は60年代にここで生まれました。

じっくりと時間をかけて味わうべき、珍しいカクテルのようなミックス。この街は最初、「のどかなミラノ」のように感じられるかもしれません。でも滞在初日の夜、撮影した写真を見ていた時、影の中に街のもう一つの姿を見つけたのです。その正体はわからずとも、私が感じていた何か。不思議なことにそれが写真の中に現れていたのです。日が経つにつれ、私たちの訪れた場所すべてが、映画のセットや小説の中の出来事、演劇の登場人物のように思え、次第に謎が深まっていきました。私にとってトリノは、その素性をほとんど知らないのに、黙っていても周囲を魅了してしまう人物のよう。謎に包まれ、その実際の姿が暴かれることのない、決して知ることのできない存在。それでも、街に立ち並ぶアーチの下に何が隠されているのか、想像を膨らませずにはいられないのです。

 

旅のお気に入り

パラッツォ・ベリーニに泊まる
イタリアで最も古い現代美術館、カステッロ・ディ・リヴォリを訪れる。チェルッティ・コレクションは必見(毎日開館ではないので、事前にウェブサイトで開館日をチェックすること)
カーサ・モリーノのセミプライベートツアーを予約する。トリノと恋に落ちる唯一の方法
グランバロンの蚤の市が開催される日曜日に合わせて、滞在日程を組む
イタリア料理のパラダイス「メルカート・チェントラーレ」ですべてを味わう
ドッピオ・ゼロ・ディ・カルボ・イザベッラで、安くて絶品のラビオリを食べる
イータリー本店で、イタリアの食品を買い込む
川を渡り、ヴィラ・スコットとレジーナ邸周辺を散策し、素晴らしい建築の数々を鑑賞する
アーケードの下を歩き、映画のセットのようなC.L.N.広場へ